「演習形式で学ぶ一般相対性理論」の「第4章 一般相対性理論-4.3 変分による Einstein 方程式の導出 の 4.3.1 Einstein-Hilbert 作用」に入ります。
その前に「4.3 変分による Einstein 方程式の導出」の序を引用します。
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Einstein が一般相対性理論を完成し、プロイセン科学アカデミーに論文を提出したのは1915年11月25日のことである。その5日前に David Hilbert は、Einstein とは独立に最小作用の原理から Einstein 方程式 を導く論文を提出していた。Hilbert の論文では電磁気学の Mie 理論を重力に適用するなど、物理学的にはいくつかの問題点を含んでいたが、Einstein の得た重力方程式を変分原理から導いたという意味は重要である。その作用は現在、Einstein-Hilbert 作用と呼ばれている。ここでは、Hilbert にならい変分を用いて Einstein 方程式を導いてみよう。
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この引用の後に、<Einstein と Hilbert>というコラムがあってとっても面白いのですが、ヒルベルトとアインシュタインとではどちらに先取権があるか?という記事と同様なので参照願います。
・Einstein-Hilbert 作用
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古典力学では作用は基礎方程式(Newton の運動方程式や Maxwell 方程式など)を導出するための汎関数であり、基礎方程式と等価である。 一方、量子論においては経路積分法や保存量の導出などにおいて作用は都合がよい。そのため、近年の理論物理学では作用がより基本的なものとして取り扱われている。
作用の満たすべき性質として、系の対称性に対して不変である必要がある。それは微小作用の原理より得られる基礎方程式は考えている系の対称性に対し共変的であるからである。 この対称性には、Lorenz 変換のような大域的な対称性だけではなく、ゲージ変換のような局所的な対称性やパリティ変換(空間反転)などの離散的な対称性、超対称性変換のような粒子の種類を変えるような変換も含まれる。
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では、重力の理論に対して、どのような対称性が必要でしょうか?
特殊相対論 : 相対性原理+光速度不変の原理 → (大域座標変換である)Lorentz 変換
① Lorentz 不変であることが必要
一般相対論 : 一般相対性原理
② 作用が一般座標変換に対して不変とあることが必要
③ 重力場のような場の作用はラグランジアン密度の4次元体積積分で表される
[例題]-----------------------------------------
一般座標変換に対して不変となる4次元体積要素を求めよ。
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\(d^{4}x\equiv dx^{0}dx^{1}dx^{2}dx^{3}\) : 4次元体積要素 → (一般座標変換) → \(d^{4} \tilde{x}= Jd^{4}x\)
ここで、\(J\) は Jacobi 行列であり、
また計量は2階テンソルなので、
さらに、\(\tilde{g}\equiv \det(\tilde{g}_{\alpha \beta })\;,\;\;g\equiv \det(g_{\mu \nu })\) とすると、
なのですが、\(g\) < \(0\) および \(\tilde{g}\) < \(0\) に注意すると、
つまり、
なので、一般座標変換に対し不変となる4次元体積要素は
であることがわかりました。
[引用]------------------------------------------
上の考察から重力場 \(g_{\mu\nu}\) の作用として
を考えよう。ここで \(\mathcal{L}_{g}\) は重力場のラグランジアン密度である。このとき、 \(\mathcal{L}_{g}\) がスカラーであれば、作用 \(\mathcal{L}_{g}\) は一般座標変換に対し不変となる。通常ラグランジアンは基本変数およびその1階微分の汎関数である。今の場合は、計量 \(g_{\mu\nu}\) とその1階微分である Christoffel 記号 \(\Gamma^{\mu}_{\mu\rho}\) の汎関数である。しかしながら Christoffel 記号はテンソルではないため、それらからつくられる汎関数はスカラーにならない。そこで2階微分までを含む最も簡単なスカラー量であるスカラー曲率 \(R\) を考えよう。
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具体的には
とし、ここで、\(\kappa ^{2}\) : 物質場に対する重力相互作用の結合定数。
また、このラグランジアンを用いた重力場の作用
を Einstein-Hilbert 作用 と呼ぶようです。
今日はこの辺で。。
ラベル:おさらい相対論
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