ただし、その平均値と標準偏差はψ(x,0)とは変化していることも分かりましたね。この変化の具合を考えましょう。
まず、平均値ですが x→x-αt なので、平均値がαtになっています。
α=(∂ω/∂k)|k=k0 なのですが、vg=∂ω/∂k で群速度と言います。
これは普通波束の中心の速度と同じで、v0=p/m と同じです。(波束の形がそのままで動いていく速度が群速度です。)
つまり、
α=p/m
ということです。
ここで、標準偏差の話に移るのですが、その前に位相速度について触れます。
群速度以外に波には、波束を構成している調和波 exp{i(kx-ωt)} の速度 vp=ω/k というものが考えられます。これを位相速度と言います。
ややこしいのでまとめて書くと、
群速度 vg=∂ω/∂k
位相速度 vp=ω/k
となります。
さて、
σ'=σ√[1+{β2/(2σ2)}2t2]
なので、β=(∂2ω/∂k2)|k=k0 がゼロ、つまり β=0 なら、σ'=σ で時間で変化しなくて波束の形が変わらないことになります。
これは ω=ck (c : 定数)という条件のときに成立します。ここで、
E=p2/(2m)=(h~k)2/(2m)={h~2/(2m)}k2 ; E=h~ω
から、 ω={h~/(2m)}k2 なので、ω=ck (c : 定数)という条件が成立しません。
vg=∂ω/∂k=(h~/m)k ; β=∂2ω/∂k2=h~/m≠0
ということで、
⊿x=σ√[1+{(h~/m)2/(2σ2)}2t2]=σ√[1+{(h~t)/(2mσ2)}2]
と、時間とともに広がっていくことが分かりますね。
この波束モデルから不確定性関係が出てくるので、波束を用いて電子そのものの運動を記述できるのではないかと期待されたこともありましたが、波束の形が時間とともにすぐ崩れてしまうことから断念されたとのことです。
ここまでの議論の参考図書
「量子力学」(加藤正昭著、産業図書:物理学の回廊)
「電子物性概論_量子論の基礎」(阿部正紀著、培風館:電子・情報工学講座7)
(考察は参考にしましたが、計算はオリジナルです。)
ラベル:物理